前回のお話し
almondfish.hatenablog.com
前回の最後に、「データを揃える」について書いていくという話をしました。その前に、やっておきたいことがありましたので、それを先に書きます。それは、これです。
確率変数に2をかけることは、確率変数を二つ足すことと同じなのか
数学の文字式を思い出してください。という変数があったとして、これに2をかけると、
となります。一方、
という式があると、2つの項をまとめて
と計算してよいのだと教わります。
であるなら、確率変数についても、同じように考えて良いのだろうか、と思ったりするのです。(こういう書き方をするということは、思ってはダメだよということなんですけどね。)いつものように、実現値で、つまり、「仮の姿」をもとに考えていきましょう。
確率変数を2つ足す
確率変数を2つ足す、という操作については、AくんとBくんの「共通見解(合計という共通見解)」を求めることだと、すでにお話ししました。ちょっとだけ復習すると、
- Aくんの仮の姿(実現値)が1だった
- Bくんの仮の姿(実現値)が0だった
- よって、「合計」という共通見解は、1+0=1になる
ですね。このとき、AくんもBくんも1になると、共通見解は2になる。AくんBくん単独では決して現さない仮の姿である「2」が、二人の共通見解ならば現れるのでした。
確率変数に2をかける
では、確率変数に2をかける、というのはどういうことでしょう。Aくんに協力してもらって考えましょう。
- Aくんの仮の姿(実現値)が1だった
- それに2をかけたので、仮の姿(実現値)は2(1×2=2)であるように見えている。
- Aくんの仮の姿(実現値)が0だった
- それに2をかけたので、仮の姿(実現値)は0(0×2=0)であるように見えている。
Aくんが見せてくれる仮の姿は、1か0しかありませんから、それに2をかけると、2か0しかないように見えます。重要な違いは次の点です。
- Bくんは登場しない。
- 2は定数である。「2をかける」の「2」は定数です。「定数である」というのは、変数ではなく、いつでも決まった数であるということです。
- Aくんが取りうる値は変化するけれど、「ふたつの値のどちらかをとる」ということは変わらない。もともとは「1か0のどちらか」だったのが、「2か0のどちらか」に変わっただけ。
このことをグラフにしてみましょう。青いグラフがAくんの変身記録の集計で、オレンジ色のグラフが、Aくん×2の集計です。
2本の棒グラフの間が広くなっただけで、あとは何も変わりません。ここでわかったことは次のことです。
確率変数を2つ足すことと、確率変数に2をかけることは、全く異なる操作である。
確率変数に1を足す
確率変数に2をかけるとはどういうことかをお話ししたついでに、確率変数に1を足す、というのもやっておきましょう。さきほどと同じようにAくんの仮の姿をもとに考えます。
- Aくんの仮の姿(実現値)が1だった
- それに1を足したので、仮の姿(実現値)は2(1+1=2)であるように見えている。
- Aくんの仮の姿(実現値)が0だった
- それに1を足したので、仮の姿(実現値)は1(0+1=1)であるように見えている。
グラフにするとこうなりますね。青いグラフがAくんの変身記録の集計で、グレーのグラフが、Aくん+1の集計です。
2本の棒グラフがそのまま右にずれただけで、あとは何も変わりません。
確率変数に2をかけて1を足す
「2をかける」と「1を足す」を同時に行って、「2をかけて1を足す」というようなこともときどき(というよりけっこう頻繁に)行います。確認すると、
- Aくんの仮の姿(実現値)が1だった
- それに2をかけて1を足したので、仮の姿(実現値)は3(1×2+1=3)であるように見えている。
- Aくんの仮の姿(実現値)が0だった
- それに2をかけて1を足したので、仮の姿(実現値)は1(0×2+1=1)であるように見えている。
グラフにするとこうなりますね。青いグラフがAくんの変身記録の集計で、黄色いグラフが、Aくん×2+1の集計です。
2をかけたので、前出のオレンジ色のグラフのように、間が広がりました。1を足したので、前出のグレーのグラフのように、全体が右にずれました。結果、黄色いグラフのようになったのですね。
でも、やはり前述のように、「Aくんが取りうる値は変化するけれど、「ふたつの値のどちらかをとる」ということは変わらない」のです。
以上のことを頭に入れて、「データを揃える」という話題にすすんでいきたいと思います。