前回のお話し
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ベルヌーイ家のきょうだいたちが集まる二項家
ずいぶん長いこと、ベルヌーイ家の話をしてきましたので、今回からは二項家の話をしていきます。二項家は、「1-8」で次のように紹介しました。
はい、これ、「二項分布」っていいます。由緒正しいベルヌーイ家の兄弟たちで構成される一族、それが二項家です。もともとの出身がベルヌーイ家なので、ベルヌーイ家のぷるぷるーるの特徴を引き継いで、新しいぷるぷるーるを作り、守っています。
さて、二項家のぷるぷる君たちは、どんな「ぷるぷるーる」を守っているのでしょうか。これは、すでに「1-4」で一例を示しています。再掲すると、
Aくんの変身記録
1,0,0,1,1,0,1,1,1,0,0,1,0,1,0,1,0,1,1,0,1,0,0,0,0,1,1,1,1,0,1,0,1,...
Bくんの変身記録
0,0,1,0,1,0,0,0,1,0,1,1,1,0,0,1,1,0,0,0,1,1,1,0,0,1,1,0,1,0,1,1,0,...
A+B
1,0,1,1,2,0,1,1,2,0,1,2,1,1,0,2,1,1,1,0,2,1,1,0,0,2,2,1,2,0,2,1,1,...
このA+Bは、「それぞれはベルヌーイ家のぷるぷるーるを守っているAくんとBくんの「合計」を共通見解として出してもらった」だけであるのに、ベルヌーイ家のぷるぷるーるとは異なるルールがそこにあるように見えているのでした。このルールが、二項家のぷるぷるーるの一例でした。グラフにしたものも再掲すると、
このような「山型」でした。
では、これを見ながら、二項家の「ぷるぷるーる」を次のように仮定してみましょう。
二項家ぷるぷる君のぷるぷるーる
- 0,1,2のどれかになる。そのほかの値には(たぶん)ならない。
- 1になるときがだいたい半分くらいで、2になるときと、0になるときは、その半分くらい(全体の4分の1くらい)
- ベルヌーイ家ぷるぷる君2人の共通見解(合計)も、これと同じルールに見える。
3つ目のルールは、実はとても大事なことを含んでいるのですが、それはもう少し後になってから話すことにします。二項家のぷるぷるーるは、統計学の言葉でどう書くかというと、たぶんこう書きます。
二項分布(例)
- 公正なコインを2枚投げたとき、表が出る枚数、つまり、0,1,2のどれかの値をとる
- コインを2枚投げたときの表とうらの出方は、つぎの4通りある。
- 表が0枚のときは、うら・うら(これは1通りしかない)
- 表が1枚のときは、うら・表、または、表・うら(ここだけ2通りある!)
- 表が2枚のときは、表・表(これも1通りしかない)
- したがって、0,1,2は、だいたい1:2:1の比率で出る。
はい、なんだか難しくなってきましたね。表とうらの出方を、いちいち数えるんか!と思いましたか?そうです。いちいち数えるんです。または、コンピュータにお任せして数えてもらうんです。めんどうですね。でも、これ、あとからもう少し使うと思うので、Excelで計算できるようにしておきましょう。Excelの適当なシートの適当なセルに、次の関数を書いてみましょう。 = COMBIN( 2, 1 )
関数を書いたセルに「2」が表示されたら、正しく書けていると思います。
ところで「COMBIN」って何でしょう。これは、「Combination」の前の方の6文字でしょう、たぶん。「Combination」は日本語で「組合せ」ですね。数学で勉強して、いやーな思い出をたっぷりとお持ちのかたもおられるかもしれません。「10人の生徒の中から代表を2人選ぶ時、選び方は何通りあるか」とか、やりましたよね。「知らんがな! 私は代表になんか向いていません。頭よさそうなあの子と、かっこいい(あるいはちょっと可愛い)あの子でいいじゃん! 私は関係ないもんね~。」とか言って、勝手にこじれていた中学生時代。懐かしいですね。それはおいといて。
同じように考えれば、
コイン2枚投げて、表が0枚になる組合せは?・・・「=combin(2,0)」とすると、答えは1通り。
コイン2枚投げて、表が2枚になる組合せは?・・・「=combin(2,2)」とすると、答えは1通り。
便利なのは、上でつくった表が、そのまま、ぷるぷるーるの説明にも使えることです。0,1,2が出るのは、だいたい、1:2:1の比率になっている、という意味ですね。ということで、二項家のぷるぷるーる、これは一つの例に過ぎないのですが、だいたいイメージがつかめたでしょうか?
今日の統計用語
- 組合せ combination
- いくつかの「異なるモノ=区別可能なモノ」から、いくつかを取り出すとき、取り出し方がいくつあるかを表したのが組み合わせですね。数学的には、もっと厳密な用語を使う必要があるかもしれませんが、そういうのは他の書籍などにおまかせしましょう。さっきの例でいうと、10人の生徒はそれぞれ名前の違う別々の生徒ですから、区別可能です。「代表として2人を選ぶ」が、「いくつかを取り出す」にあたります。生徒のことを「モノ」扱いしているようにみえますが、それは、「この生徒は引っ込み思案で」とか、「この生徒は数学が得意で」とか、そういう、ほとんどすべての属性や性格なんかを問題にせずに、(ある意味、単純に)数学の問題として考えたいからなんですね。でも、私たちはつい、「あの子人気があるから」とか、「あの子可愛いから」とか、そういう属性や性格をもとにものごとを決めがちです。むしろそれが普通ですね。ただ、数学はそういうことをしない、というだけのことです。「だから数学はキライなんだよ」と感じる人も多いかもしれませんが。