びっくりポイントの復習
前回のお話し
almondfish.hatenablog.com
ぷるぷる君1号の変身記録について考えています。前回は、AくんとBくんが、変身した結果=仮の姿を教えてもらうのに、一人ひとり教えてもらえなくて、AくんとBくんの値を足し合わせたものだけ教えてもらうとしたら、どうなるかな、を考えていました。
で、AくんもBくんも、0と1にしか変身しないはずなのに、A+Bにすると「2」が出てきたり、「0」よりも「1」が明らかにたくさん出てきたりしたので、びっくりしたのですね。そういうわけで、本当かなあ? 図にして考え直してみない? というノリで今回のお話しが始まります。
図にしてみたよ
はい、図にしてみたらこうなりました。
左端がAくん、青い棒が0で、オレンジの棒が1です。Aくんの変身記録は「0」が15回、「1」が18回だったので、(細かい目盛りはつけていませんが)正しく図示されていますね。
中央がBくん、Bくんは「0」が17回、「1」が16回でした。
で、考えるのはA+Bくん(?)です。
右端の図を見てみましょう。これがA+Bです。ほらね、やっぱり0と1は同じくらいだし、「2」なんか出てきていないでしょう。やはり、前回の記録が間違っているんですよ。あとから比較するために、このグラフ(3つ並んでいるうちの右端)を、「背比べ」と呼んでおきます。青い棒とオレンジの棒が背比べしているように見えますよね。
では、比較のために、前回びっくりしたときの記録をそのまま図にしてみましょう。こんな風になります。数値を確認したい方は、前回の記事を見なおしてくださいね。このグラフを「山型」と呼んでおきます。真ん中が高くなっているので、お山の形に見えますよね。
どうでしょう。どっちが正しいのでしょうか。
どっちも正解
さっさと答えを書いてしまうと、どっちも正解です。ただし、やっていることの意味が違います。「どっちの図が正しいのか」と問うことで、やっていることの意味の違いについて意識していただきたくて、あえて混乱させるような曖昧な書き方をしてきています。
では、やっていることの意味の違いを言語化してみましょう。
「背比べ」は度数の和を表している
背比べの図をもう一度見てみましょう。青い棒はどのようにして描いたかというと、AくんとBくんの記録を「ひとまとめにした」ときに、0と1がそれぞれ現れた回数を数えて描いています。
- Aくんの「0」の回数(15)と、Bくんの「0」の回数(17)を足し合わせて、32。
- Aくんの「1」の回数(18)と、Bくんの「1」の回数(16)を足し合わせて、34。
つまり、「背比べ」の図の青い棒には、「Aくんの0」と「Bくんの0」がごちゃまぜになって入っています。そして、32回のうち15回は「Aくんの0=Aくんは0だった」、残りの17回は「Bくんの0=Bくんは0だった」と、分けることができます。ちなみに、こういう「回数」のことを、統計学の用語では「度数」と書くことになっています。英語だと frequency 頻度、みたいな言葉を使います。でも「度数」って、日常で使わないから、なんとなくわかりにくかったりしますよね。
「山型」は共通見解の度数を表している
これに対して「山型」は、AくんとBくんの共通見解を表しています。
- 青い棒は、AくんもBくんも「0」だった回数(8回)。つまり、「ふたりの値を足し合わせた数を教える」という共通認識のもとで、「0」という共通見解を答えた回数です。
- オレンジの棒は、AくんとBくんの、どちらかが「0」で、どちらかが「1」だった回数(16回)。共通見解(「ぼくたち」の仮の姿を足し合わせたら1=ぼくたちは1、という共通見解)が「1」だった回数です。
- グレーの棒は、AくんもBくんも「1」だった回数(9回)。これは、「ぼくたち」の仮の姿を足し合わせたら、今はたまたま「2」=ぼくたちは2、という共通見解の回数です。
つまり、棒に表されたどの1回1回にも、合計33回のうちのどの1回1回にも、Aくんの仮の姿と、Bくんの仮の姿の「両方が、かならず反映されている」のです。
もし、AくんまたはBくんが、「ちょっと用事あるから、またね」といって帰って行ってしまうと、「山型」をこれ以上描き続けることはできません。残った一人が仮の姿を答え続けても、それは、「共通見解」ではなくなってしまうから。
でも、「背比べ」のほうは、たとえどちらかが帰ってしまっても、描き続けようと思えばできます。もしAくんが先に帰ってしまったら、Bくんの仮の姿だけでグラフを描き続け、「0」が50回、そのうちAくんの「0」は15回のままで、Bくんの「0」が35回、みたいになって、「Aくんの分少ないよねえ」みたいになりますけどね。続けられないわけではない。
今日の統計用語
- 度数 frequency
- 変身記録を見ていて、「0」が15回あったら、「0」という値の度数は15です、とか言う。frequency って辞書を引くと「頻度」「発生件数」とか書いてあるので、「0っていうのいくつ見つけた?」みたいな質問の答えが「度数」ということかな。日常的に「度」をつけるのは、「今日の最高気温は25度」みたいなときだけだけど、「度数」は温度とは関係ありません。「今度遊びに行くね~って言ってたけどさあ、うちに遊びに来たこと、一度だってないじゃない!」というときの「一度」は、「1回」と言い換えてもいいので、これは「度数」です。つまり、「あなたが私の家に遊びに来たという出来事の度数は0である」と、この方は主張しているわけです。まわりくどい!