『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ』を読んだ。
世界最大のリモート組織とも呼ばれる「GitLab」がオフィスも無いのに、どのようにして最大限の成果を出せているのか。。。という話が書かれている。
実は、それらノウハウについては、「GitLab Handbook」というWebサイトに詳細に纏められており、筆者の千田 和夫さん自身がそれらを翻訳・解釈して、実際に会社に取り入れてみてわかったこと、感じたこと、そして、Handbookに書かれている目的や背景を解説している。
筆者の千田 和夫さんは、LAPRAS株式会社の人ですね。
LAPRASといえば、私もアウトプットを可視化するために使用させてもらっていて、とてもお世話になっています。リモート組織であることも有名ですね。
本書は、以下のような構成で書かれています。
第1部 リモート組織のメリット - 第1章. 世界最先端のリモート組織「GitLab」 - 第2章. リモート組織によって得られるメリット 第2部 世界最先端リモート組織へ移行するためのプロセス - 第3章. リモート組織を構築するためのプロセス - 第4章. リモートワークで発生する問題と対策 第3部 GitLabが実践するリモート組織を活性化させるカルチャー醸成法 - 第5章. カルチャーはバリューによって醸成される - 第6章. コミュニケーションルール - 第7章. リモート組織におけるオンボーディングの重要性 - 第8章. 心理的安全性の醸成 第4部 GitLabが成果を出すために実践している人事制度や業務ルール - 第9章. 個人のパフォーマンスを引き出す - 第10章. GitLab Valueに基づいた人事制度 - 第11章. マネージャーと役割とマネジメントを支援するためのしくみ - 第12章. コンディショニングを実現する - 第13章. L&Dを活用してパフォーマンスとエンゲージメントを向上させる
第1部でリモート組織にすることで得られるメリットを解説し、第2部でリモート組織へ移行するためにはどうすれば良いかを説明しています。 第3部からは、リモート組織としてカルチャーの作り方(いわゆる会社にリモート組織に必要な文化をどう根付かせるか。。。)を説明して、第4部はリモート組織に必要な人事制度や業務ルールを説明しています。
以降、個人的にとても学びになった第3部について、学びのポイントと感想を記載していきます。
GitLab Valueとは?
目次にもありますが、本書を読み進めていると、「GitLab Value」という言葉が頻繁に出てきます。
「成果」「イテレーション」「透明性」「コラボレーション」「ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギング」「効率性」の6つの Valueがあり、GitLabにおいて仕事を進める上での基本原則であり、価値観・行動基準を言語化したものです。
ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギングとは?
「成果」や「透明性」や「コラボレーション」、「効率性」については、なんとなくイメージできるのですが、「ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギング」がイメージできないので、整理してみます。
- ダイバーシティ:国籍や年齢、場所を問わない
- インクルージョン:多様性がある分だけ、「コミュニケーション」コストが掛かり生産性を下げてしまうため、常に多様性と生産性のバランスを維持するために、制度や経営戦略を見直していくこと。
- ビロンギング:「自分の居場所はここである」という感覚。ただし、日本の「会社が居場所である(全社員に画一的な価値観を強要することで家族の一員として認めるイメージ)」とは異なる。
つまり、多様性を受け入れる状態を作りながらもバランスを取っていきましょうということですね。
イテレーションとは?
「イテレーション」もイメージできないので、整理してみます。
フィードバックをもらって、人・ビジネス共に成長しようということですね。
本当の非同期コミュニケーション
本書の中に「コミュニケーションルール」という部分あるのですが、個人的に「たしかにこういったルールがあると良いな」と思いました。
- マージリクエストやIssueに関する議論は最優先で処理すること。
- 業務時間中に依頼を受けた際に、その依頼をこなす場合にかかる日数のめどを伝えるか、即時に完了させること。「やります」「タスクに加えます」といった納期が曖昧な回答をしない様、注意すること。
- 何か質問がある場合は、Slackのオープンチャンネルや Issue を活用して質問するようにし、ダイレクトメッセージや 1 on 1 で質問することは避けること。
- 同じテーマに対して非同期コミュニケーションが3度往復するような場合は、同期コミュニケーションへ切り替えること。
- 信頼関係を構築して、必要なコンテクストを迅速に共有する場合など(チームに新しく加わったメンバーとのはじめてのミーティング、複雑な問題の初期対応、感情的にデリケートなテーマ、お祝い、定期的な1 on 1など)は同期コミュニケーションで行うこと。
- 勤務時間や物事に集中する時間は、予めGoogleカレンダーへ登録しておき、空いている時間を共有すること。
私も常にリモートで仕事をしているのですが、どうしても同期コミュニケーションをとってしまいがちなので、このあたりこういったルールがあると良いと思いました。
オンボーディングの重要性
「オンボーディング」についても、ちゃんと意識して考えたことがなかったので、予めGitLabのようなスケジュールを用意しておくのが良いと思いました。
GitLab内でのオンボーディングの役割と内容
オフィスで直接同僚と顔を合わせるわけではない、リモート組織だからこそ、安心してパフォーマンスが発揮でき、チームに受け入れられることで孤独感を覚えずに済むという非常に重要な役割を担う。
GitLabでは、4週間にわたる具体的な行動スケジュールをオンボーディングプロセスとしてテンプレート化しており、迷うこと無く取り組めるようにしている。
また、新入社員に対してはオンボーディングのバディ(相棒)を任命しておき、初日は終業時間に近い時間に 1 on 1を実施し、あとは週2回の 1 on 1 により、オンボーディングのプロセス状況や疑問・不安に回答できる機会を作っている。
最終的には、オンボーディングに対するフィードバックを新入社員・中途入社社員からもらうことにしており、随時オンボーディングプロセスの見直しを行っている。
やはり、1 on 1 は欠かせないのと、フィードバックによる改善が鍵な模様。
心理的安全性
「同意しない、コミットする、同意しない」という言葉が出てきます。
これは、自分の意見や成果物を批判される = 自分の人格を批判される。このような状態になってはならなくて、あくまで「意見や成果物」と「人格」は分けて考えるべきだ。という考え方が前提にあります。
その上で、GitLabでは、意思決定を行う役割を持つDRI(Directoly Responsible Individuals)という立場の人がいて、その人が最終的な意思決定を行うようにしています。
DRIが決定したことには、反対意見をもっていてもコミットして全力で協力しなければならないルールがあり、もし、DRIの決定が妥当ではない場合が続くようであれば、改善を求めて交代するそうです。
同意しない(反対意見がある)=>それでもDRIに従いコミットする。 =>その結果を見てもやっぱり同意しない(反対意見がある) => DRIを交代する。
このような流れで、物事を進めていくという考え方になります。
「心理的安全性」はエンジニアのパフォーマンスにとても影響するので、予めルールやDRIを決めておくこととは「なるほど。こういった考え方があるのか。。。」と、とても学びになりました。
さいごに
「リモート組織」でどのようにしてパフォーマンスを出して開発していくか、まるでバイブルのような本であった。
たしかにこれらを取り入れれば、リモートであってもチーム内での意見のズレや無駄なコミュニケーション、心理的安全性が構築でき、信頼関係が構築できるような仕組みになっている。
実際、これらを取り入れたLAPRAS株式会社はYouTube等での動画を見ても、メンバー間ですごく仲が良さそうでした。(信頼関係が構築できていることがわかります)
リモートによる課題が出たときには本書はとても参考になるかもしれない。。。