微分方程式の解が形成するベクトル空間...
...のことを「解空間」というらしい。n階の線形微分方程式の解空間の次元はnであるという定理はよく知られている。
今日の講義(古典力学)で扱ったのは、抵抗有りの場合の1次元調和振動子(減衰振動)の運動方程式 \begin{equation} \frac{dp}{dt}=-m\omega^2 x -2m\gamma v \end{equation} だったが、数学的にはまさにこれは2階線形微分(同次)方程式であるから、その解空間の次元は2である。したがって、一般解は線型独立な2つの解の線型結合となる。
例えば、抵抗係数の方が振動数よりも劣勢な場合($\gamma < \omega$)、一般解は2つの結合定数$C_1, C_2$を用いて \begin{equation} x(t) = \exp(-\gamma t)\left(C_1 \cos \omega't + C_2 \sin\omega't\right) \end{equation} で表せる。ただし$\omega'=\omega\sqrt{1-\gamma^2/\omega^2}$。
この線型結合の形は、あたかも2次元の実空間におけるベクトル$\boldsymbol{v}$の表現のようである。 \begin{equation} \boldsymbol{v} = x\boldsymbol{ e }_x + y\boldsymbol{e}_y \end{equation}
高校の数学では、これを$\boldsymbol{v}=(x,y)$と書く場合があると思うが、これに倣うと減衰振動の運動方程式の一般解は$(C_1, C_2)$と書いてもいいだろう。要は両方とも2次元のベクトル空間の表現である点において「同じ」だということである。
量子力学の1次元問題
さて、本日の講義では「量子力学へつながる様な古典力学の内容を見せてほしい」という要望が出たので、準備なしに話をする羽目になった。量子ドットの例をひいて1次元固有値問題を例示した時、ひとつの疑問が頭に浮かんで冷や汗が流れた。「あれ?井戸型ポテンシャルの解空間って2次元だっけ?違うよね....あれ?」という疑問である。
シュレディンガー方程式の特別な場合としてエネルギーが保存するとき、量子力学の基本方程式は2階の線形微分方程式の形を持つ固有値方程式となる。 \begin{equation} -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\phi(x) + V(x)\phi(x) = E\phi(x) \end{equation}
簡単な場合として、自由な空間$V(x)=0$を考えると、解は \begin{equation} \phi(x) = C_1\exp(ikx) + C_2\exp(-ikx) \end{equation} になりそうに見えるが、実は無限次元となる(ヒルベルト空間だから...)。 ただし、$E=\hbar^2 k^2/2m$と書き換えた。
さて、この矛盾はどうやって解決するのであろうか.....。(つづく)